いつもの帰り道、アルバロはいつものようにルルの手を引いて歩いている。
 捕まっているのは、どちらだろう。
 不意にそんなことを思ってルルは思い出した。同じ道で、いつか彼に大言壮語を吐いたな、と苦く笑う。
 「あのさぁ、ルルちゃん」
 「なぁに、アルバロ…」
 些か疲れたように返ってきた言葉に、アルバロは振り返らず目を細めて小さく笑った。
 「改めて聞きたいんだけど」
 「うん?」
 「俺が君を好きになるって、どうやって判断するの?」
 「……うん??」
 ルルは首を傾げて曖昧に返事をした。意味がわからない。
 言葉が足りなかったかな、とアルバロは苦笑して考えるようにうーんと唸ってみせる。
 「前の君ならともかく、今の君は、俺の言葉を疑ってかかるわけじゃない?もちろん、それが悪いわけではない。俺がそうしたんだし。でも、その場合、俺が君を好きだと言ったところで君には伝わらないんじゃないかと思ってさ」
 あぁ、とルルは理解した。同時に彼の本音も理解する。
 「……大丈夫。私、わかるもの」
 淡い笑みを浮かべ、ルルは断言した。
 「……俺には、わからないんだけど?」
 アルバロには、ルルがわからない。命のやり取りをした相手に純粋に笑ってみせることも、自信ありげに断言することも。
 「そうね……アルバロは、意外と素直に感情を出してると思うわ」
 確かに彼は、表情を変えず感情も思考も相手に読ませないことに長けている。特に、悪意や負の感情に関しては。
 けれど好意は、少し違っていて。

 注意していないと見逃しそうな、ほんの一瞬。
 紛れも無い彼の本音を垣間見ることができる時が、ある。

 「それは――…、勘違いじゃない?」
 呆れたように苦笑を乗せるアルバロに、ルルはにっこりと笑って見せた。
 「そうかもね。でも、少なくともそんなことを聞くうちは違うわよね」
 私が求める、好き、とは違う
 ルルは楽しそうに告げて。
 わからないな、と呟いたアルバロは笑みのままに溜め息をついて、視線を戻した。
 ルルはくすくすと笑い、アルバロの手を握り反す。

 例えどんなに難しいことでも、大言壮語であろうと、ルルの気持ちに偽りはない。
 だから。


 例えば、今手を繋いでいるように。
 例えば、あの時命を繋いだように。



 いつか貴方と心、繋いでみせるから




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