深く、墜ちて行く感覚。

どう表現すれば当て嵌まるかわからないけど、言葉にしてみるとそんな感じだろうか。

グラデーションの暗闇が周りを埋め尽くしていて俺には一切が見えない状態だというのに、墜ちて行くような沈むような奇妙に生々しい感覚だけが解る。
その中でじっとただひたすらに、多分上に向けているはずの視線が六等星よりも暗くなってしまった光源を、瞬きすら忘れて見つめていた。なんでこんなことしてるんだっけ。俺は今どこにいるんだろう。
うつらうつら、倦怠感と共に眠気が襲う。
欠伸をするために開いた口から、こぽっと空気が漏れた。なんだか海の中で息をしたみたいだ。ここは海なのかな。けれども息を吐いたその口で息を吸ってみても水は入ってこないし息苦しさもない。

変なの、と心のなかで呟いて、目を閉じる。
それは全ての終わりの合図のような気がして一瞬だけ恐怖という感情が浮かんだのだけれども、最後とばかりに吐き出した空気の泡とともに霧散する。


途端に。

閉じた瞼さえも貫通して入り込んだ、淡い光が目を差した。

思わず目を開いて、けれど眩しさに目を細める。光の先には、何かあるようだけれど、よく見えない。
確かめるように手を伸ばすと、ソレも手を伸ばしてきた。
白い白い、きれいな手。
触れて、熱が伝わって、俺はよくわからないままに一粒涙を流した。





「つーきこっ、手、貸して!」
「どうして?」
「いいから、はいっ、タッチ!」
ハテナマークを浮かべた月子に向けて両手を突き出すと、首を傾げながらも彼女は同じように両手を突き出して合わせるように触れる。
「これでいい?」
「うんうん、……あったかいなー」
軽く触れただけの淡雪みたいに白くやわらかな手は、見た目とは違う確かな熱を伝えてくる。
逃がさないようにぴったりくっつけて、それでも物足りなくて少しずらして、壊さないよう、けれどもしっかりと握りしめる。
「…つばさ、くん?」

「月子はあったかいな」








みつけたひかり


(ぼくがみつけたのか、きみがみつけたのか)