一人を犠牲にすれば、百人を助けられる
百人を犠牲にしなければ、一人は助けられない

百人は見知らぬ誰かたち、一人は貴方にとって大事な人

ならばあなたはどちらを犠牲にし、どちらを助けますか?



「為政者がぶち当たる難題だな」
「国を治める人ではないけれど、生徒会長もトップですし、似たような場面があるかもしれません」
「…いやぁ、平和なこの国この学園じゃ有り得ないような気もするんだが」
「まあ、例えばの話ですから」
とりあえず答えてください、と催促する月子に、俺はふむと間をおくように唸る。

大事な人、ねぇ…

「選択肢がおかしいな」
「選択肢、ですか?」


「俺なら百一人助ける」


「ひゃくいち……ですか。条件無視ですね」
「おう、俺に不可能はない。その条件を崩して、百人助けて犠牲になる予定の一人も助ける。道はあるさ」
百一人を助けられない奴は、その道を知らない奴だ。
そう言うと、月子は困ったような呆れたような悲しいような、複雑な笑みを浮かべる。
「何があろうと全員、助けるんですね。会長らしい気がします」
「だろ?」
くつくつと喉を鳴らして笑うと、向かい合った月子がその複雑な笑顔のまま、片腕を上げた。


「だったら、助けてあげてください、ね。百一人のうちの、一人」


彼女がピンと立てた人差し指は、じくりと俺の真ん中を貫いた。








気付いてください、貴方は傷ついている

(私は見知らぬ百人よりもたったひとりの貴方が大事なのです)
100129