星を見ていると、何も考えずにすんだ。頭が真っ白になって、視界いっぱいに広がる夜空と点在する小さな明かりに目も思考も奪われる。
それは小さい頃から、変わらない。
昔から、幼なじみたちと寝転がっていろんな場所で星を見上げた。伝え聞く神話の登場人物を探したり、覚えにくい横文字の星の名前を競うように口にしあったり。

「おっきいなぁ…」

視界を埋め尽くす夜空と星たち。
いつもこうして見上げる時は、誰かが隣にいた気がする。高校に入ってそれは幼なじみたちだけではなくなった。クラスメイトだったり先生だったり部活の仲間だったり、色んな人と色んな星を見た。
いつからか、それは一人の人に絞られ、隣には必ずその人が居た、のだけれど。

「やっぱり、寒いなぁ」

夜は寒いからといっぱい着込んで来たのに、と誰にともなく呟いて、寝転がる。いい年して地面に直に寝転がるなよ、なんて苦笑する声が聞こえてきそうだ。
いつもあった温もりは、今はない。

「大丈夫、だいじょうぶ」

少し、我慢すれば、また一緒に同じ夜空を見上げることができるから。
冷たい風が頬を撫でて、一度目をつむる。寒さのせいか、強くつぶったせいか、刺激されたらしい涙腺が水滴を零れさせた。

「だいじょうぶ、だから」

閉じた瞼に映った笑顔のその人に言い訳するように、呟く。貴方は夢のために飛び立つ翼を手に入れて、私はそれを嬉しく思っていて、貴方が笑顔でいられるなら、それでいい、から。
この涙を見ているのは、遠い空に浮かぶ小さな明かりたちだけ。私が笑顔を浮かべれば貴方はきっとこんな気持ちには気付かない。




見て見ぬふりのスターライト

(ただ、次に会った時にはおもいっきり抱きしめてください、そしてたくさんのキスをください。)