真っ直ぐ貫く、その視線が印象的だったのを今でも覚えている。
「宮地君」
夜久はいつも真っ直ぐに相手の瞳を見て話す。
「次の授業の教室までご一緒していいですか!」
「なんで敬語なんだ?」
「…うーん、気分?」
あははっとごまかすように笑う夜久に、少し苦笑する。愛嬌、というならこういうことを言うのかもしれない。
中学の頃から女子と話す機会が少なくなり、高校ではほとんど男子校といって過言じゃないこの星月学園に来た。だから初めて夜久と部活で会った時は、戸惑いのほうが大きく先が思いやられると思ったのも事実。
けれども一年以上も同じ部活で練習をともにし、何の因果か選択授業も同じ。
そうなれば必然的に話す機会も増えた。
「今日は少し肌寒いよねー」
「そうだな。練習の前に走り込みでもするか…」
「…もう部活の話?まだ午前中だよ?宮地部長は熱心だね」
「む…」
くすくすと夜久が笑うのに眉を寄せると、シワが出来てる、とまた笑う。
「うん、でも宮地君らしい」
くすくす、くすくす。
夜久の笑った顔は嫌いじゃない、が、『笑われる』ことは好きじゃない。ぐるぐると掻き混ざる感情にむむっと更に眉が寄る。
「でも走り込みはブーイング出そうだよね」
「ああ、特に白鳥と犬飼あたりがな…」
不真面目、というわけではないのだろうけれども何かにつけて目を見張っておかなければならない二人を思い浮かべてまた苦笑する。
「とりあえず様子見で、ね?お昼過ぎて暑くなるかもだし」
そういって笑いかけて来る視線は、やっぱり真っ直ぐに俺を見ているから。
「そうだな」
結局は夜久に甘い自分に苦笑を深めた。
微動だにしない瞳に恋をして
(その揺るがない視線に惹かれて引き付けられて離れられずにいる)
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