手に入らないなら、いっそ。



「…たい、痛いって、オビ!」
目が覚めるような意識を突く声に、はっとする。
「ぁ……っと、悪いね」
無意識に力を込めていたらしい手を離し、意識して笑い顔を作った。
白雪は怪訝そうに眉を寄せ、取り落とした備品を拾う。オビは気づかれぬよう苦笑をこぼす。

いつか似たようなこと、やったことあるなー…

そして似たような反応を貰ったのだ。
「…オビ、行くよ?」
備品を入れた箱を抱えながらいつの間にか先を進んでいた白雪が、振り返って再び眉を寄せた。

これは、少し違う反応

振り返らず先を行った背中を思い出しながら、足を進める。オビが隣に来たのを確認した白雪が呆れたように息をついた。
「たまに、オビは変」
「……そ?」
自覚ないんだ、と駄目押しのように呟いた白雪はそれきり口を閉ざす。それを視界の端に認めながら、心の内でそうかもねと返事をした。


手に入らないなら、なんて


そんなのわかりきっていただろうに。







破壊願望