声を掛ける前に、その赤は振り返った。
「あ、やっぱりオビだ」
「お嬢さんにしては珍しい。何で気付いたの?」
いつも特に気配を消しているわけじゃないけれど、オビ自身が声を出さぬ限り、白雪は気付かないことが多い。ゼンやその側近らと違い一般庶民の娘なのだから当たり前ではあるのだけれど。
おどけたように問うたその些細な疑問に、白雪は小首をかしげてはてと考え込むそぶりをした。
「どうして・・・?どうして、かな。なんとなく・・・そろそろ来るかなって」
影の護衛役を仰せつかってしばらく経つ。その間白雪といた時間はゼンより多い。
その成果だろうか、とオビは見えないように口元を隠して小さく笑った。

「要は勘ですか。お嬢さんも人のこといえないんじゃない?野生的ー」
「・・・・・・馬鹿にしてる?」


きっと彼の存在を超えることは出来ないけれど、少しずつでいいから、その意識に。







溶けるように馴染んでいけ