「不思議っスよね、なんで警官とかなれたんスか、青峰っち」
久々に会った仲間に、開口一番出てきた言葉は、それだった。

「オイ。どういう意味だ」
「そのままの意味じゃないか、大輝。僕も割と疑問に思うね。どうやって試験を突破したんだい?」
案の定というか当たり前というか、矛先を向けた相手は不機嫌そうに眉を寄せる。けれども同意の声が他方からもあがり、青峰は若干脱力したようだった。
「赤司…お前まで言うか」
本当のことだからね、と、元主将は容赦がない。知る限りの中学時代も、聞く限りの高校時代も、学力、態度ともに警官などという職に進むには適していないように見えた。のは、自分だけじゃなかったんだなとちらりと思う。
「まぁ本気で取り組めばどうにか成るもんなんスかね。っていうか、プロバスケに行くのかと思ってたんスよ、青峰っちもっスけど、赤司っちも、みんな」
真に問いたかったのは、そこだった。
黄瀬の疑問に、ぱちりと目を瞬かせたのは赤司。一層不機嫌そうに顔をしかめたのは、青峰。
「僕は、簡単な理由だな。今のバスケ界の天は見えていて、到達するのは容易そうだったから見限った」
「さすがっスね…恐ろしいとも言う…」
天など見ようともしなかった黄瀬には到底できない発想だ。
感心しつつもその隣に問いを投げる。
「青峰っちは?」
「…お前だってプロの道は選ばなかっただろ」
返ってきた答えは、求めていたものと違った上に、若干痛い。
あー、まー、と意味のない声をあげながら言葉を探す。その様子にか、赤司がふっと笑みを浮かべた。

「そういえば、初めに就職を決めたと報告をくれたのは、テツヤだったね」

「…そうっスね。保育士になります、って一言メール。何の話か一瞬わからなかったっス」
それだけ衝撃的だった。
確か自分は、バスケは?、と返したような気がする。
職業にはできませんから、とこれまた短い返信が来たのを、今でもはっきり覚えていた。

「だからじゃないかな」

「…へ?」
自分があげた素っ頓狂な声に、返事はない。赤司は笑みを浮かべたまま、言葉は続けなかった。
青峰に視線を向ければ、不機嫌そうな横顔。

今の言葉を繋げれば、黒子がプロの道を選ばなかったことが、そのまま青峰の理由になるとでも言うかのようで。

…なんだ、同じ、だ

思わず笑みがこぼれた。
すかさず青峰の拳が向かってきたが、手のひらで受けたそれにたいした威力はなかった。
もしもの未来
(大事なもの、欠けた状態じゃあできないから。)


120908

この場合黄瀬と青峰の理由は若干違うと思いますが。
FBネタでした。黄瀬は目標がないとやっていけない気がする。