※ ぽけっとCZ ビショップ後日談の後





























この気持ちを例えるなら、憧憬、だろうか



その日の予定を消化して、帰路についていた央が思い浮かべたのは、弟とその彼女のことだった。央がいない今現在、また些細なことで喧嘩をしてすれ違っていたりしないだろうか。
先日も痴話喧嘩、もしくは惚気としかいいようなことですれ違っていたのだ。
二度あることは三度あるっていうし、ちょっと心配かなぁ
まぁ、それでも結局は仲直りをしていつものように見せ付けられるのだろうけれど。そう思って央は苦笑する。なんだかんだで彼らは彼らなりに一生懸命互いを思い遣っているのは知っている。

いいな、って思うよ、やっぱり

その先日の痴話喧嘩で自分が言った言葉を思い返して、一人頷いてしまう。
やはり彼女はとても魅力的な子だと思う。綺麗な容姿であることももちろんひとつの魅力だとは思うけれど、それ以上に、彼女の内面の可愛さが最大の魅力だろう。

時々、本当にたまにだけど…うらやましいって、思うんだよね

彼女が、円に向ける愛しさでいっぱいの顔とか、そのまっすぐな想いとか。
それがもしも自分に向いたなら――どんな気持ちになるんだろう、と。

もしも円よりも僕が先に出会っていて、僕が先に仲良くなっていたら、もしかしたら

【今】では有り得ないそのときを想像してみようとして、首を振る。だってそんなのわかるはずがない。【今】央が見ているのは、円が愛している彼女で、円を愛している彼女だから。
栓のないことを考えてるな、と思いながら央は角を曲がる。もう間もなく、今の拠点となっている隠れ家が見えるはずだ。
円!と叱り付けるような声が聞こえた気がして、自然と笑いが零れてしまった。


やっぱりね、彼女は魅力的だよ
君を一番に想っている彼女は、すごく魅力的だ
僕も、そういう風に想われたいし、想いたいなぁ、ってね、思うから


大好きだよ、


(世界の平和や政府の改心なんかよりね、もっと身近で大事な君たちが幸せで在れる世界を一番に望んでいるよ)


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