視界を埋め尽くすは、赤。
全てを飲み込むのは、炎。
計画も、成果も、願望も、すべて喰われていく。
「あと少し、だったのになー」
ぽつりと呟いた言葉に、応えはない。
いつもは空気を読まずに騒ぐはずの相棒は、今になって沈黙を保っている。感傷に浸れと、今だけだからと、言うように。
目を閉じれば、浮かぶのは笑顔だった。
ただ、もう一度。
ただもう一度だけ、見たかった。己を形作っていた彼等の、姿を。
理不尽に奪われた、笑顔を。
「うまくいきませんねー」
ははっと渇いた笑いが零れる。呼応するように聞こえた小さな声が、人生そんなもんだ、と呟いた。
「まあ案外、お前も楽しんでたろ?」
ぱちり、とひどくゆるい動作で瞬く。
楽しんだ、だろうか。
思考もひどく緩くて、ただ妙に鮮やかに思い浮かぶ過去の情景。
確かに、そうかもしれない
馬鹿みたいな、ママゴトみたいな、そんなやりとり。
そうして。
「そう、ですねー。認めますよー」
自分でも意外なほどに、自然と口の端があがるのを自覚する。
最後に浮かんだのは、幼い笑顔と真っ直ぐに射抜くような眼差し。
代わりに君の笑顔を抱いて
(仕方ないからそれで手を打ちましょうか)
101226